腟乾燥かも?|更年期の腟の乾燥・かゆみの原因と対策を徹底解説

一般的に、閉経前後の5年を合わせた10年間の期間を更年期と呼びます。40歳を過ぎた頃から、男女問わずエストロゲンの分泌は不安定になり、多くなったり少なくなったりと揺らぎながら減少していきます。この“揺らぎ”によって、ほてりやのぼせ、発汗、不眠など身体的・精神的不調が現れますが、この更年期に起こる不調こそが更年期障害と呼ばれています。

実は更年期症状は100種類以上もの症状があると言われており、40〜50代女性の「2人に1人」がこの更年期障害に悩んでいます。

今回は、更年期に感じる膣の乾燥やかゆみ原因や治療法などについて詳しく解説していきます。

産婦人科医 監修

五十嵐 豪先生(五十嵐レディースクリニック院長)
20年間2万人の更年期患者を診療し更年期と向き合う。
医学博士|日本産科婦人科学会 専門医|女性ヘルスケア専門医|日本プラセンタ医学会 理事|川崎市医師会理事|聖マリアンナ医科大学臨床教授

 

更年期に腟が乾燥するの?

原因について

更年期には、女性ホルモンの一つであるエストロゲンの分泌が減少します。エストロゲンは、女性の体内で様々な役割を果たしていますが、その中でも特に重要な役割が、膣や陰部の潤滑を保つことです。 エストロゲン分泌の減少により、腟からの分泌液が減り、腔が乾燥・萎縮し、粘膜のみずみずしさが失われ、その結果、乾燥しやすくなります。この乾燥が、「腟乾燥」や「陰部のヒリヒリ感」の主な原因になるのです。

このうるおい不足は肌や目、口にも見られ、総称してドライ症候群(ドライシンドローム)ともいわれています。このような症状は、日常生活に影響を及ぼすだけでなく、性生活にも大きな影響を与えます。

腟の”かゆみ”の原因にも

乾燥により細菌が増殖

腟や陰部の乾燥が、腟のかゆみを引き起こすこともあります。エストロゲン分泌の低下により、腟内のPHバランスが崩れ、細菌の増殖を招くことがありますが、これが「かゆみ」の原因にもなり得るのです。

また本来、腟内は酸性に保たれており、雑菌等の侵入を防ぐなどの働きをしていますが、うるおい不足によりその働きが弱まると、腟炎や性感染症に罹りやすくなることもあります。ストレスや睡眠不足、食生活の偏りや運動不足が体の抵抗力を低下させ、かゆみを悪化させることも少なくありませんので、しっかりケアを行うことが重要です。

ほてりなどの更年期の症状とは異なり、腟の健康の問題が自然治癒することは稀です。また過度な洗浄や不適切な腟ケアは、腟内の自然な環境を破壊し、かゆみや刺激感を誘発する可能性があります。

正しいケアの方法を知ることで、不快でイライラする腟の症状を早期対策していきましょう。

今日からできる!腟の乾燥や”かゆみ”の予防と対策💡

更年期における腟の乾燥や”かゆみ”に対する予防と対策はいくつかあります。
こちらでは日常生活で取り入れられる簡単な予防方法から、専門的な治療や市販薬の活用まで、明日から始められる具体的な方法を詳しく紹介します。

腟錠を使用する

更年期による膣の乾燥やかゆみに対処するためには、腟錠の使用は局所的に効果的なためおすすめです。腟錠とは、腟内部に固形のお薬を直接挿入して使用する医薬品で、分泌液や体温で少しずつ溶け出すことで、腟の乾燥やかゆみ、刺激感を軽減し、腟内の自然な潤いをサポートします。

例)ホーリン腟錠

使用方法

腟錠の使用方法は製品によって異なりますが、両足を広げてしゃがみ、一般的には清潔な手で図のように腟状を指先で膣内の深いところに挿入してください。腟内に挿入し、一定期間放置することで薬剤が腟内部に行き渡ります。

腟内に挿入するのが難しい人は、専用のアプリケーターを使用することもおすすめです。アプリケーターなら、慣れない方でも正しい位置に挿入できます。

医師からの注意ポイント

膣錠を使う際は「夜寝る前」を推奨しております。日中は歩行や運動等で膣錠が落ちてしまう可能性が高いため、寝る前に服薬してください。

使用頻度

使用頻度については、炎症がひどい人なら毎日、または2日に1回ペースで腟錠を入れますが、一般的に3日に1回の頻度で腟錠を使用することが多いです。腟炎がよくなってきたらペースを調整します。処方した医師の指示に従うことが重要です。病院でお薬を処方された薬は、症状が改善されても全て使用してください。

効果と注意点

腟錠に含まれるエストロゲンは、腟の乾燥や薄くなった腟壁を改善する効果があります。ただし、ホルモン剤であるため、使用する際には副作用のリスクもあります。

次のような方は使う前に必ず担当の医師と薬剤師に伝えてください。

  • 以前に使用して、かゆみ、発疹などのアレルギー症状が出たことがある
  • 乳癌・子宮内膜癌またはその疑いがある
  • 妊娠、妊娠している可能性がある、授乳中(妊娠中は使用できません)
  • 他に薬などを使っている(薬同士がお互いに作用を強めたり、弱めたりする可能性もありますので、他に使用中の一般用医薬品や食品も含めてご注意ください)
膣錠は良くなったらやめていいの?
あさこさん
あさこさん

 

膣錠は良くなったらやめていいの?
あさこさん
あさこさん
五十嵐先生
五十嵐先生
3日に1回が通常の使用目安ですが、調子が良くなったら1週間に1回にするなど服薬頻度を減らす調整をしていく方が調子がいいと思います。

HRTを服用する

ホルモン補充療法(Hormone Replacement Therapy、略してHRT)も1つの選択肢です。HRTは、更年期によって減少する女性ホルモンを補う治療法です。経口剤(飲む)、貼付剤(貼る)、ジェル剤(塗る)を選べますし、腟内に薬を入れることに抵抗がある方や痛くて膣錠の使用は避けたい方には、こちらがおすすめです。腟錠同様、ホルモン剤であるため使用ができない方や投与に注意を要する方がいらっしゃいます。また使用後は定期的な乳がん検診・婦人科がん検診・採血が必要です。

保湿剤を塗る

膣の乾燥対策として最も簡単なのは、ワセリンなどの非香料の保湿剤を使用することです。肌に直接塗布することで、膣周辺の皮膚を保護し、乾燥を防ぐことが期待できます。ただし、長期的な解決策とはなりませんので、症状が改善しない、トラブルが悪化しているといった場合は、医師に相談しましょう。

市販薬を利用する

腟内クリームなど、腟乾燥を改善する市販薬も多数存在します。軟膏やクリームなどの市販のかゆみ止め製品も有効です。ただし、使用する際は、専用の製品を選び、肌に合わない場合は使用を中止することが大切です。製品選びに際しては、成分表を確認し、敏感肌向けの製品を選ぶことをお勧めします。

腟ケアを行う

日頃から適切な腟ケアを行うことで、腟の乾燥や不快な症状を和らげることができます。

一番おすすめしたいのは、デリケートゾーン専用のソープを使うことです。腟内のpH値は弱酸性であるのに対して一般的な石鹸やボディソープはアルカリ性のものが多く、炎症が起こっている状態で使用すると、刺激が強く、臭いや痛みの原因となったりします。pH値が酸性寄りのデリケートゾーン専用のソープを使えば、刺激も少なく、清潔な状態に保つことができます。

最後に更年期における腟のケアは、生活習慣の見直しも重要です。バランスのとれた食事、適切な運動、ストレスの管理なども意識して行ってみてください。

医師からの注意ポイント

HRTは多くの女性に有効ですが、すべての人に適しているわけではありません。乳がんの既往歴や血栓症のリスクがある方など、HRTを使用出来ない方もいらっしゃいます。担当医師と十分に相談してHRTを開始してください。

以上のような対策を講じることで、更年期における腟の乾燥やヒリヒリ感を改善することができます。

更年期は女性の体が大きく変化する時期です。この時期は無理をせず、自分を労ってあげるのが吉です。

無理をしない、頑張らない、リフレッシュできるような楽しいことをする、など、自分の心の声をしっかり聴いてあげましょう。焦らずとも、更年期のゆらぎもいつかは終わります。心と身体を潤わせるケアをして労わりましょう。

HRTには、経口薬、パッチ、ジェルなど複数の形態があります。担当医と相談して最適なタイプを選択しましょう。

最後に

「ただの年齢のせいだろう、、」「きっと更年期だろう、、」と自己判断だけに頼ることは危険です。更年期障害ではなく、他の病気のサインの可能性もあります。

更年期の症状が辛い、と少しでも思った際は、ぜひ気軽に更年期を熟知した医師にご相談ください。 適切な診療を受けて、何が原因なのか突きとめることが大切です。

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